スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ラスベガス』についてのメモ

そういえば前回の読書会のまとめ的なものを書いていなかったことに気づいたのでちょっと書いておきます。

一言で言えば『ラスベガス』は、「近代建築家は建築に働く象徴主義を認めて、それをもっと利用できるようにしていこうよ」という話であるとまとめられます。この場合、問われているのは建築家の態度です。そして実際この本でヴェンチューリらは、建築家の態度を問題にしている。

しかしここでその主張を、建築を使う側の視点にニュアンスを置いて言い換えると、「一部の人がわかる建築じゃなくて、それを使うみんなが使いやすい建築にしようよ」という風になるのではないかと思われます。

とりあえず、レジュメにも使ったこの表を見てもらいたいのですが、

RV.jpg

このように、『ラスベガス』は「近代建築」と「ヴェンチューリ」の対立に連なる、さまざまな二項対立を形作っています。

ではこれらのなかで、この本を理解する上でいちばん大事な対立はどれでしょうか。

もちろん、それぞれの項目は絡みあっているので一概にどれとは言い切れない。そもそもこの表自体、僕が適当に抜き出して作ったものなので不備もあるでしょう。
その前提の上で、いろいろ考え方もあるとは思いますが僕自身は、注目されやすい「あひる」と「装飾された小屋」の対置ではなく、実は「含蓄の連想作用(暗示的)」と「明白な連想作用(明示的)」の対立こそが、最もこの本の本質を突いているのではないかと思うのです。
そしてそれは、表に挙がっているなかで唯一、はっきりと建築を使う(見る)側の視点に立っているのがこの対立であるからに他なりません。

ヴェンチューリが近代建築の(無視されていた)暗示的な象徴性=含蓄の連想作用を糾弾し、明示的な象徴性=明白な連想作用を称揚したのは、使う側のコミュニケーションの経済性に重きを置いたからなのだと思います。

近代建築の暗示的な象徴性は、一部のエリート層に独占されていた。要するに、当時の近代建築を見て、「ハイハイこの形態ってミースのあの建築のアレみたいなことだよね」という風に理解できるヤツはごく一部だった。しかも、そこで作用している象徴性は基本的に空間造形の美しさに奉仕している。つまり、「これってミースのアレってことだよね」→だからこの空間造形はイケてる、みたいな感じで近代建築マニアのマニア心を満足させるかたちでしか作用しない。ヴェンチューリが言いたいのは、そんなことやってる近代建築に社会性とか公共性なんかねーよ、ということだと思うんですね。
それに対して、誰が作ったかもわからないラスベガスのロードサイドの看板は、文字さえ読めれば誰にでも理解できる。だったら俺たち建築家も、誰にでもわかる象徴性使っていったほうがイケてね? ヴェンチューリが言ってるのは基本的にそういうことだと思います。

しかし同時に、ここで強調しておきたいのは、ラスベガスの看板はあくまでひとつの(極端な)例でしかなくて、別に文字を使った建築とか看板を使った建築が一番いいのだと言いたいわけではないだろうということです。たとえば、最後の方で(ラスベガスではなく)レヴィットタウンのリサーチをした話や、郊外の風景に作用している象徴主義についての挿絵が出てくる。そういった形で「誰にでもわかる、使う人の日常に密着した象徴主義」の体系(=図像学)を建築家はもっと研究して使っていこうよという話なのであって、「EAT」という文字が書かれた看板はそのひとつの例でしかないのだと思う。

ある場合には文字を使うことが求められることもあるだろうし、またある場合には看板を使うことが求められる。その機微を見極めるのが文脈を重視するということであり、ある文脈のなかで最も象徴性の伝わりやすい(コミュニケーションが効率的に発生しやすい)方法を取り入れていこうよというのが、ヴェンチューリの言いたいことだったのではないでしょうか。

あくまで話の重点は、「一部のヤツにだけわかる象徴主義(あひる=当時の近代建築)」→「それを使う・見る、みんなにわかる象徴主義(装飾された小屋=ヴェンチューリ自身)」という建築のパラダイム・シフトを提案することにあり、その論旨に説得力を持たせる上で、ラスベガスの街は格好の題材だった。言い換えれば、ヴェンチューリにとってラスベガスの街は、貴重な例ではあるものの、割と交換可能なものとしてあったのではないかと思います。

(asano)
スポンサーサイト

コメント一覧

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ほんちく!!

Author:ほんちく!!
関西の大学生やら大学院生やら建築系やら文系やら忙しい人やら暇人やらが参加している、建築関係の読書会です!
幼稚園児からお年寄りまで参加者募集中です!!
過去の読書会アーカイブ
hon-ticのアンテナ

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
記事一覧

全ての記事を表示する

月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
QRコード
QR
FC2カウンター
  近代建築の
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。