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『ラスベガス』についてのメモ

そういえば前回の読書会のまとめ的なものを書いていなかったことに気づいたのでちょっと書いておきます。

一言で言えば『ラスベガス』は、「近代建築家は建築に働く象徴主義を認めて、それをもっと利用できるようにしていこうよ」という話であるとまとめられます。この場合、問われているのは建築家の態度です。そして実際この本でヴェンチューリらは、建築家の態度を問題にしている。

しかしここでその主張を、建築を使う側の視点にニュアンスを置いて言い換えると、「一部の人がわかる建築じゃなくて、それを使うみんなが使いやすい建築にしようよ」という風になるのではないかと思われます。

とりあえず、レジュメにも使ったこの表を見てもらいたいのですが、

RV.jpg

このように、『ラスベガス』は「近代建築」と「ヴェンチューリ」の対立に連なる、さまざまな二項対立を形作っています。

ではこれらのなかで、この本を理解する上でいちばん大事な対立はどれでしょうか。

もちろん、それぞれの項目は絡みあっているので一概にどれとは言い切れない。そもそもこの表自体、僕が適当に抜き出して作ったものなので不備もあるでしょう。
その前提の上で、いろいろ考え方もあるとは思いますが僕自身は、注目されやすい「あひる」と「装飾された小屋」の対置ではなく、実は「含蓄の連想作用(暗示的)」と「明白な連想作用(明示的)」の対立こそが、最もこの本の本質を突いているのではないかと思うのです。
そしてそれは、表に挙がっているなかで唯一、はっきりと建築を使う(見る)側の視点に立っているのがこの対立であるからに他なりません。

ヴェンチューリが近代建築の(無視されていた)暗示的な象徴性=含蓄の連想作用を糾弾し、明示的な象徴性=明白な連想作用を称揚したのは、使う側のコミュニケーションの経済性に重きを置いたからなのだと思います。

近代建築の暗示的な象徴性は、一部のエリート層に独占されていた。要するに、当時の近代建築を見て、「ハイハイこの形態ってミースのあの建築のアレみたいなことだよね」という風に理解できるヤツはごく一部だった。しかも、そこで作用している象徴性は基本的に空間造形の美しさに奉仕している。つまり、「これってミースのアレってことだよね」→だからこの空間造形はイケてる、みたいな感じで近代建築マニアのマニア心を満足させるかたちでしか作用しない。ヴェンチューリが言いたいのは、そんなことやってる近代建築に社会性とか公共性なんかねーよ、ということだと思うんですね。
それに対して、誰が作ったかもわからないラスベガスのロードサイドの看板は、文字さえ読めれば誰にでも理解できる。だったら俺たち建築家も、誰にでもわかる象徴性使っていったほうがイケてね? ヴェンチューリが言ってるのは基本的にそういうことだと思います。

しかし同時に、ここで強調しておきたいのは、ラスベガスの看板はあくまでひとつの(極端な)例でしかなくて、別に文字を使った建築とか看板を使った建築が一番いいのだと言いたいわけではないだろうということです。たとえば、最後の方で(ラスベガスではなく)レヴィットタウンのリサーチをした話や、郊外の風景に作用している象徴主義についての挿絵が出てくる。そういった形で「誰にでもわかる、使う人の日常に密着した象徴主義」の体系(=図像学)を建築家はもっと研究して使っていこうよという話なのであって、「EAT」という文字が書かれた看板はそのひとつの例でしかないのだと思う。

ある場合には文字を使うことが求められることもあるだろうし、またある場合には看板を使うことが求められる。その機微を見極めるのが文脈を重視するということであり、ある文脈のなかで最も象徴性の伝わりやすい(コミュニケーションが効率的に発生しやすい)方法を取り入れていこうよというのが、ヴェンチューリの言いたいことだったのではないでしょうか。

あくまで話の重点は、「一部のヤツにだけわかる象徴主義(あひる=当時の近代建築)」→「それを使う・見る、みんなにわかる象徴主義(装飾された小屋=ヴェンチューリ自身)」という建築のパラダイム・シフトを提案することにあり、その論旨に説得力を持たせる上で、ラスベガスの街は格好の題材だった。言い換えれば、ヴェンチューリにとってラスベガスの街は、貴重な例ではあるものの、割と交換可能なものとしてあったのではないかと思います。

(asano)
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第5回(3/23) ロバート・ヴェンチューリ『ラスベガス』

3月23日に千里山・山脇文庫(古い本がいっぱいある個人経営の図書館)に於いて、第5回読書会を行いました。
前回までに参加していた4人に加えて、関学と同志社の方が3人見学で来て下さいました(このブログを見て興味を持ってもらったということで、俺は本当に感動した!)。

前半『ラスベガス』とは関係ない話が盛り上がって、読書会は基本的に本の内容理解の共有に終わりましたが、携帯ストラップや飛田新地にまで話題が飛び、かなり面白い話ができたと思います(感想とかこのブログに書いてくれると嬉しいなー。嬉しいのになー)。

試しに音声ファイル(最初の方切れてる)をうpしてみる↓(一週間で消えます)
http://firestorage.jp/download/337cf75a80fe08aedb62c27a21936f94d5012014

1.5倍速くらいで聴いてもらうとちょうどいい感じです(笑)。

次回の課題図書は藤村龍至/TEAM ROUNDABOUT編著『1995年以後』です。
皆さんそろそろ学校が始まって忙しくなると思いますが、ぜひぜひ参加してください。

(asano)

第3回 ル・コルビュジェ『建築をめざして』(2/17)

参加者は3人でした。

(随時改善・更新してください)

建築をめざして (SD選書 21)建築をめざして (SD選書 21)
(1967/12)
ル・コルビュジェ

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『建築をめざして』(1923)

ピュリズムの画家アメデエ・オザンファン、ポール・デルメーと1920年に創刊した『エスプリ・ヌーヴォー(新精神)』誌の記事をまとめたもの。

○原本には「ル・コルビュジェ=ソニエ」と署名されている。ソニエは『エスプリ・ヌーヴォー』をともに創刊した盟友オザンファンの筆名。いわばコルビュジェ(=シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ)個人の作ではなく、二人の共作が、今日ではコルビュジェのものとして流通している。

○理路整然と論証していくタイプの文章ではない。
   コルビュジェの確固たる美学に基づいた断定・アフォリズム
             ↓
  美学と機能主義がいかに両立しているのか

○「立体も面も平面によって決定される。平面が原動力である。」
   →「形態は機能に従う」の《機能=平面》、《形態=立体・面》?

○建築と工業製品の写真が同じように配置されている。
  →自身の建築が工業製品のように流通することを望んだコルビュジェの意図

■1920年代という時代背景
1914-1918年 第一次大戦
1917年 十月革命、ソビエト政府樹立
1919年 ヴェルサイユ条約(ヴェルサイユ体制)
1920年 国際連盟発足

○ヨーロッパの荒廃→1900万人の死者、都市に流れ着いた多くの人々
 (彼らを収容する住居の需要)
○国民国家体制の変容→近代国家
 (新しい統治単位(=家族)を決定づける住居の必要性)
○軍事面での技術革新の恩恵→日常レベルへの機械技術の浸透
 (「機械」への期待→「新精神」)

■コルビュジェと「モダニズム」のズレ
「住宅は機械である」
 
KINDAI.jpg


ル・コルビュジエ (1983年) (20世紀思想家文庫〈10〉)ル・コルビュジエ (1983年) (20世紀思想家文庫〈10〉)
(1983/09)
八束 はじめ

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スタイン邸にせよ、それ以上にサヴォア邸にせよ、それらはただ一度限り、その場においてのみ生産され得る最高度のモニュマンであり、「量産」の精神とはもはや遠い所にあった。それはもはや「宮殿」たろうとしている。パルテノンは必ずしも電話器と等価ではなくなりつつある。(…)「住宅」と「宮殿」は直結しない。何故なら、モニュメントとしての後者は、反復性を拒むからだ。(…)ル・コルビュジェは巨匠の道を登りつめつつさえあったが、巨匠という概念すら、本来モダニズムとは馴染まないものなのだ。


 ○サヴォア邸(1929-1931)=近代建築の五原則を実現したモダニズム建築の代表例
 ※ソノダさんがサヴォア邸を訪れた際のビデオを持ってきて下さいました!

 ○ロンシャンの礼拝堂(1950-1955)→機能性・合理性重視のモダニズム建築からかけ離れた特徴を持っている

※コルビュジェにとって実作より理念の方が重要だった(→ある意味場所性を重視しない)
 (S・V・モース『ル・コルビュジェの生涯』)

■近代と「何でもない存在」の関係
  この時期に政治的・宗教的モニュメントから、一般の人々が住まう住宅に建築の注目が移ったことは重要。


定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)定本 日本近代文学の起源 (岩波現代文庫)
(2008/10/16)
柄谷 行人

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 たとえば、(国木田独歩の)『忘れえぬ人々』では、それまで重要なものとみえた人々が忘れ去られ、どうでもよいような人々が「忘れえぬ」ものとなっている。これは、風景画において、それまで背景でしかなかったものが宗教的・歴史的な主題にとってかわるのと同じである。注目すべきなのは、このときそれまで平凡でとるに足らないと思われた人々や事象が意味深いものとして見えてきたことだ。


ここで柄谷は「なんでもない」風景を「見る」人間が「内的」であること、そこに生まれた内面が近代文学の基盤となったことを述べる。
    ↓
近代と視覚との関係(→コルビュジェの「目」への注目、「ものを見ない目」)


マスメディアとしての近代建築―アドルフ・ロースとル・コルビュジエマスメディアとしての近代建築―アドルフ・ロースとル・コルビュジエ
(1996/06)
ビアトリス コロミーナ

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○自身の建築が写真(複製技術)として流通する状況を利用するメディア・アーキテクトとしてのコルビュジェ(『建築をめざして』他で自身の理念をより明確に打ち出すために写真を修正)
○写真は建築の固有性や場所性を剥がしてしまう
○コルビュジェにとって窓は外を見るためのものだった(カメラとしての住宅)



■コルビュジェとファシズムの親和性

(要編集)

夢と魅惑の全体主義 (文春新書)夢と魅惑の全体主義 (文春新書)
(2006/09)
井上 章一

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コルビュジェの「ソビエト・パレス案(1930)」と丹下健三の「広島平和記念公園(1955)」が似ている。
※コルビュジェと同様に近代文明・機械文明を称える芸術運動としてイタリアに登場した未来派は、のちにファシズムに回収されていく

○思いつき=建築家の「設計」「計画概念」の是非について、社会主義的な計画経済と資本主義的な市場経済の対比で考えられるのでは?

過去の読書会アーカイブ

事後的に気付いたことなど多いので、順次ちゃんとしたまとめをアップしていきます。
いきます……いくはずです…・・・いくつもりです……。

第1回 2010/01/05 レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』(1979年)
於:某ガスト
参加者:2人

錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)錯乱のニューヨーク (ちくま学芸文庫)
(1999/12)
レム コールハース

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第2回 2010/02/06 五十嵐太郎『美しい都市・醜い都市―現代景観論』(2006年)
於:甲子園口の喫茶リトモ
参加者:4人

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)
(2006/10)
五十嵐 太郎

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第3回 2010/02/17 ル・コルビュジエ『建築をめざして』(1923年)
於:中崎町の喫茶天人→阪急梅田駅構内の某喫茶店
参加者:3人

建築をめざして (SD選書 21)建築をめざして (SD選書 21)
(1967/12)
ル・コルビュジェ

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第4回 2010/03/04 ル・コルビュジエ『輝く都市』(1946年)
於:甲子園口の某喫茶店
参加者:5人

輝く都市 (SD選書 33)輝く都市 (SD選書 33)
(1968/12)
ル・コルビュジェ

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第5回 2010/03/23 ロバート・ヴェンチューリほか『ラスベガス』(1972年)
於:千里山・山脇文庫
参加者:7人 レジュメ担当者:浅野

ラスベガス (SD選書 143)ラスベガス (SD選書 143)
(1978/01)
R.ヴェンチューリ

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第6回 2010/04/11 藤村龍至/TEAM ROUNDABOUT編『1995年以後』(2009年)
於:千里山・山脇文庫
参加者:4人 レジュメ担当者:別所その1 その2 その3

1995年以後―次世代建築家の語る現代の都市と建築1995年以後―次世代建築家の語る現代の都市と建築
(2009/02/21)
藤村 龍至TEAM ROUNDABOUT

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第7回 2010/04/25 ケヴィン・リンチ『都市のイメージ』(1960年)
ヨドコウ迎賓館→於:神戸モザイク・Tomi's BAR
参加者:3人 レジュメ担当者:そして誰も作ってこなかった。

都市のイメージ都市のイメージ
(2007/05)
ケヴィン リンチ

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第8回 2010/05/30 鈴木博之『現代建築の見かた』(1990年)
於:千里山・山脇文庫
参加者:3人 レジュメ担当者:sonoda

現代建築の見かた現代建築の見かた
(1999/03)
鈴木 博之

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ほんちく!!

Author:ほんちく!!
関西の大学生やら大学院生やら建築系やら文系やら忙しい人やら暇人やらが参加している、建築関係の読書会です!
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